2010.10.01
今日は日本分析化学専門学校の創立記念日でした。1981年10月に本校の校舎(現在の実験棟)が完成してから、これまでに多くの分析化学者の卵を産業界に輩出し、今年で29周年を迎えることになりました。創立記念日は建学の精神や原点を学ぶ上で大変重要な日であり、これまでも姉妹校の環境学園専門学校の教職員の方々と合同で、いろんな行事を行ってきました。ここ数年は、両校合同で理事長や教職員からの講演が行われた後、親睦を兼ねた懇親会という流れが多かったのですが、今年は原点も原点、日本の「化学」のルーツを勉強するため、教職員一同で岡山の弁柄館(ベンガラ館)と津山洋学資料館を訪ねて参りました。
まずは、ベンガラ館に到着しました。ベンガラとは酸化第2鉄を主成分とする赤色の無機顔料で、漆器や陶磁器、印刷インキや染織用など、多岐に渡ります。ちなみに、ベンガラという呼び名は、インドのベンガルに由来していると言われています。
入口はこんな感じ。
入口の横にベンガラの由来について説明ボードがありました。
そしてこちらがベンガラの用途。
九谷焼にもベンガラは使われているんですね。
ベンガラ作りには様々な工程があり、工程ごとに別の建物になっています。
なんやかんやで最終工程です。
中はこんな感じ。
作業工程の見学終了後には観光協会に方に当時のお話を伺いました。
また、日本で初めて化学の学校が出来たのは1869年明治時代のことでしたが、その学校の名前は「舎密局:せいみきょく(舎密は化学を意味するオランダ語 Chemie の字訳、局は学校という意)」といい、オランダ人の化学の先生であるハラタマ先生を明治政府がお招きし、教頭先生として開校されました。(ちなみに、この舎密局があった場所が、本校から歩いて10分くらいの所で、現在もその跡地を示す石碑があります。)こうして日本でも化学が体系立てて教育されることになるのですが、実はそうした学校のないもう少し前の時代でも、かつての日本人は独学で西洋の学問を学ぼうとしていたのです。そこで、今回は、独学で西洋の学問(洋学もしくは蘭学といいます)を学んだ偉人達のことを勉強するため、津山洋学資料館を訪ねてきました。若干長い日記になりますが、学んだことを少しこちらでご紹介させてください。
時は1700年代に遡ります。日本は江戸時代、西洋の知識はオランダによって長崎・出島からもたらされ、「蘭学」が生まれました。そして蘭学が日本に影響を与えたのはまずは医学分野でした。小浜藩医 杉田玄白「解体新書」はあまりにも有名ですが、その時代を共に生きた偉人の中に、今回訪問した洋学資料館の主人公である津山藩医 宇田川玄随がいたのです。彼は、息子として宇田川玄真を養子に、また玄真も息子として宇田川榕菴を養子にし、津山藩医は宇田川家によって代々継がれていったのです。さらに、蘭学から日本の医学の基礎を作った宇田川玄随の流れから、息子、孫へと移行するにつれ、その学問領域も医学から薬学、植物学へと少しずつ変化していきます。しかし、特筆すべきところは、玄随からすると孫にあたる宇田川榕菴の化学への功績です。実は、先述の舎密局が開講される約30年前の1837年に、彼は「舎密開宗」という近代化学の本を出版しているのです。今現在皆さんが普通に使っている元素名である「酸素、水素、窒素、炭素」などや、「酸化、還元、溶解」といった化学用語は、彼がオランダ語から翻訳する際に作った日本語の造語で、これらの学術用語はこの本の中にすでに出て来ているのです。そして、何と言っても、本校の学校名にもある「分析」という用語も彼が造った言葉なのです!写真は洋学資料館にある宇田川榕菴先生の胸像です。
少し長くなりましたが、言いたかったことは、学校も何もない時代に母国語以外の言語で書かれた本を通じ、日本に医学、薬学、植物学、化学、そして数学や物理といった様々な学問を構築した先人の意思を後世にも伝えていかなければならないし、幸運にも私たちはそのような立場にあるということを感謝すべきだと感じたということです。
ちなみに、ベンガラの町吹き屋村や、横溝正史による長編推理小説「八ツ墓村」の映画で登場する多治見家のロケ場所となった広兼邸も道中に訪れました。街並みを紹介するのと同時に、先生たちの素顔を少しだけ紹介!
ベンガラが使用されているために、吹き屋の街並み全体がピンク色に。
とっても雰囲気のある郵便局。今でも現役で使われていました。
少しおどけたボヤッキー先生とバッテン先生。
写真を撮ろうとしたぽてと先生を逆にこちらから激写!
場所は変わって八つ墓村ロケ地。広兼邸にて。
石垣も高く、お城みたいな豪邸でした。
カメラににじり寄るせんぱい先生。
ということで、今日は小難しい日記になりましたが、1年に1回の原点を考える創立記念日だから、そういう日もあっていいですよね。そして、先人から頂いたパワーをエネルギー源に変え、来週からまた授業や実験指導に頑張りたいと思います!最後まで長文にお付き合い頂き、ありがとうございました!
byすくろーす