2013.10.01
今日は、日本分析化学専門学校の創立記念日で、授業は休講でした。
1981年10月に校舎(今の実験棟)が完成し、32年目を迎えます。
これまでに、約3000名の分析化学者を産業界へと送り出してきました。
『化学』という学問は、今でこそ確立された分野になっていますが、
化学が化学と言われる以前から、さまざまな先達たちが未開のものにチャレンジしたり、
苦闘・苦悩を繰り返してきた結果、今、私たちが豊かさを享受したり、
そのことを当然のように学生たちに伝授しています。
しかし、化学者の思いに触れ、建学の精神を再確認する上で、
今日の創立記念日は、大切な一日になりました。
化学の歴史、日本の歴史、本校の歴史に触れた、盛り沢山な一日を紹介致します。
まず、学校前からバスに乗って出発です。
ここは化学とは直接関わりはありませんが、
行程の途中にある、今、注目のスポット。
日本のマチュピチュと言われる山城に向かい、中腹の駐車場から歩いて出発です。
196段の階段と坂を約20分登れば、石垣と山々のコラボレーションが絶景でした。
教職員皆、笑顔で集合写真を撮りました!
それにしても、こんな山の上に、昔の人はどうやってお城を建てたのでしょう。
想像を絶する苦労が浮かびます。
続いては、日本で最も古い鉱山の1つである生野銀山です。
教科書では「佐渡の金山、生野の銀山」と習いましたね。
生野銀山では、807年に初めて銀が出たと伝えられており、
その後、1542年に銀石が掘り出され、鉱山開坑の起源といわれてきました。
織田信長・豊臣秀吉・徳川家康らの時代には、政権の直轄地になったところで、
その後、1868年には日本発の官営鉱山(政府直轄)となり、
1973年に閉山となりました。
約1200年間、銀を採掘し
坑道の総延長は350km以上、深さは880mにまで達しています。
その中の様子を少し紹介します。
中の温度は、年中通して13℃で、肌寒さを感じました。
この独特の気温を利用して、お酒やワインを熟成させるための
貯蔵庫としても利用されていました。
写真の穴は、狸穴と呼ばれ人が一人通れるくらいの大きさです。
人が、実際に手で掘り進んだ穴です。
掘り出された鉱石は、写真のトロッコで運搬されます。
これは大正期に入ってからですが、
それまでは負子(おいこ)と呼ばれる人の手で運ばれていました。
そして、運搬された鉱石は地上へと運び出されます。
ここで取り出された鉱石1tから取れる銀の量は、わずか10g。
また、金であれば0.2g程度です。
こうして、取り出された銀の一部は、
大阪の造幣局へと運搬され、貨幣に鋳造されていました。
この造幣局が本校から徒歩2分圏内にあるのですから、ご縁を感じずにはおれません。
写真は、その時に用いられた大型精密天秤です。
ちなみに、本校も同時代の小さな精密天秤を所蔵しています。
麦芽とホップと水が味の決め手となるビール。
100年以上の歴史の中で、選び抜かれた高品質なものから
ビールが作られています。
写真左が、実際に使用されている麦芽で、写真右がホップです。
大麦を発芽させることから、ビール作りは始まり、
ホップやビール酵母を加え様々な工程を経て最終1か月~2か月熟成させ、
日頃私達が口にするビールが完成します。
キリンラガービールの歴史は古く、約120年前から作られています。
最近では、様々な種類のビールが研究開発されていますが、
ビールだけでなく容器も進化しています。
ビール瓶は、その軽量化のため、ガラスの厚みを薄くして、
その上にセラミック加工が施されました。
写真は、従来のビール瓶と、軽量化されたビール瓶の重さを
比較している本校の校長です。
最後に、ビールや清涼飲料の試飲をさせていただきました。
今、私達がこうして美味しく頂いているビールですが、
1613年にイギリス船に積まれ、日本に上陸したものが、
最も古いとされています。
国内では、1853年に当時蘭学者であった川本幸民が、化学実験の一つとして、
ビールを醸造したと言われています。
また、川本幸民はビールだけでなく写真機や、
マッチを日本で初めて試作しました。
そして、これらの実績が認められ、
幕府の学問所の蘭学教授として招かれ、
活躍しました。
キリンビアパーク神戸から大阪へ帰る途中、
川本幸民の顕彰碑を見て参りました。
幸民は、この三田市の出身で、三田小学校の正門横に顕彰碑が建立されています。
こうして、人や社会や国の発展に貢献してきた化学者のおかげで、
今の化学技術が確立され、私達の生活が成り立ってきました。
また、創立32年を迎えた本校も、これまでに多くの教員が
学生指導にあたり、職員がそれを支えてきたことによって、
沢山の分析化学者を社会に送り出してきました。
そんな先人達の熱い思いを感じ、そのパワーをエネルギーに変えて、
明日からまた、授業や実験、就職指導を始めとする学生教育のために
全力を尽くしたいと思います!
by せんぱい