2014.11.30
本校では、平日に通学できない方を対象に、週末(土曜日・日曜日)開講の「化学分析コース」を
設置しています。通学は週末だけですが、平日の学科と同じ2年間で卒業でき、卒業時に無試験で
取得できる国家資格(毒物劇物取扱責任者・化粧品製造業責任技術者・化粧品総括製造販売責任者)も
全員が取得できます。このコースに在籍する学生は、平日学科の学生と同様に、化学関係の仕事に
就職したいと考えている方、既にお勤めの方はスキルアップを目指して、また事業の拡大を考えて
いる経営層の方など、それぞれの目的を叶えようとしています。このような、在校生の多種多様な
入学目的を達成するために、この化学分析コースは各学年、20名の少数精鋭で開講しています。
さて、1年生は午後から(分析目的とする成分が「どれだけ」あるのかを調べる)定量分析実験に
取り組みました。定量分析といっても色々ですが、今日のテーマは酸化還元滴定。酸化還元反応を
利用した滴定で、試料溶液に含まれる鉄の量を分析しました。鉄の分析と言えば、以前のブログで
重量分析という実験に取り組んだことも紹介しましたが、どちらの方法にも一長一短があります。
今回行う滴定法は短時間で分析できるというメリットがあり、技術が伴ってくると誤差を最小限に
縮めていくこともできます。そのような特徴から、公定分析法(国や公的機関において定められた
分析方法)でも多く用いられる方法です。
今回の実験内容は、水質検査で実施されるCOD(化学的酸素消費量)測定の技術にも関連が深い
実験です。環境分析の仕事への就職や転職を目的として入学する学生もいますので、先ずは今日の
実験を通して原理をよく理解し、酸化還元滴定の技術を修得しようと熱心に取り組んでいました。
この実験では、操作の一部で化学反応(色の変化)に数分間を必要とします。M君(上写真)のが
行う操作の中で、その反応の様子を皆でじっくり観察しました。今までの実験であれば、混ぜると
すぐに色が変化する実験が多かったのですが、なかなか変化しません。約3分後に、変色しました。
色の濃い紫色から、ルビー色を経て、無色透明へと変化していきます。私が知っている化学反応の
中でも綺麗だなと思う反応の一つです。色が消えた時は「うわぁぁ!」といった驚きにも似た声が
聞こえてきました。こういった驚きが興味を高めて、理解を深めるポイントになるのだと思います。
M君(上写真)は、環境分析の仕事に従事したいと考えて入学した学生です。
実験後に話を聞いてみました。
『今日の実験は主に2つの目的を持って取り組みました。一つは容量分析(滴定)法と、
以前に実施した重量分析法との結果の比較です。同じ鉄の試料を2つの分析手法にて
分析しているので、各手法のメリットなどが授業で学んだ通りなのかを確認すること。
もう一つは、水質分析のCOD測定の基礎スキルを身に付けることです。分析方法の
比較はデータ処理してから検討しますが、COD測定に必要な原理や色の判断基準は
理解できましたし、酸化還元滴定の基本的なスキルは身に付いたと思います。1月に
COD測定の実験があるので、今から楽しみにしています。』
化学分析の実務で活躍するには、ベースとなる基本的な実験をしっかりと理解することが大切です。
それぞれの入学目的を達成するプロセスとして、一つひとつの実験と向き合って、将来の仕事との
関連性を考えてほしいと思います。明日から12月、体調に気をつけて、来週も頑張りましょう!
by あずみ