せんせのブログ

創立35周年記念講演『宮沢賢治と化学』 実に面白い!

2016.10.01

本校は今年で35周年を迎え、これまでに約3,500名の卒業生を
産業界に輩出し、今日まで分析化学一筋で走ってきました。

今日、10月1日は本校の創立記念日。
これまでを振り返り、そして今日から、また未来に向かってのスタートの日とすべく、
創立記念行事を行いました。

今日のブログは、当初は、本校のこれまでの歴史を紐解き、
いろいろとご紹介しようと思っておりましたが、
特別記念講演『宮沢賢治と化学』と題してご講演頂いた
京都薬科大学名誉教授で、現在は京都女子大学で教鞭をとっておられる
桜井弘先生のお話があまりにも興味深く、一般の方々や在校生、卒業生にも
広く知っていただきたいという気持ちになりましたので、
本ブログでは、そのことを中心にご紹介したいと思います。

f:id:bunseki:20161002155311j:image
f:id:bunseki:20161002155313j:image

37歳で生涯を終えた宮沢賢治(1896-1933)は、一般的には詩人・童話作家として
認識されていると思います。当然、私もそう思っていましたので、賢治と化学が
どう関係しているのか?ということを最初は疑問に思いながら、講演を聴くこととなりました。

ところが、講演を聴くにつれ、化学と非常に深い関係があるお話がたくさん出てきます。
たとえば、賢治の詩には、化学に関する表現や元素名が多く登場しています。
20歳で詠んだ詩には「コバルト」「カリウム」が(下の写真右側参照)、
28歳で書いた銀河鉄道の夜の一節には、「水素」「酸素」「実験」「硫黄」「水銀」
が出てきます(下の写真左側参照)。
こうした賢治の作品や日記、手紙に、合計なんと45種類もの元素が登場しているのです。
果たして私のこれまでの人生で、手紙や日記に、元素名や化学に関することを
どれ程登場させただろうか?と、化学を押している身として、
思わず恥ずかしくなるような気持ちになりました。

f:id:bunseki:20161002155314j:image

また、『春と修羅』では、本校の化学実験でも使用しているガラス器具
「キップの装置」での化学反応についての表現が登場するほか、
光合成や有機化合物、香りについても紹介され、自然を化学としてとらえ、
それを独特の世界観で表現していく才能に感嘆しました。

f:id:bunseki:20161002155316j:image
↑左の図が「キップの装置」

f:id:bunseki:20161002155317j:image
↑光合成や有機化合物にも触れられています

加えて、20歳の時に詠った詩には、「分析」という言葉が出てきたり、
農学校教諭時代に、独自の周期表を作成し、生徒に配っていたという
エピソードも飛び出し、本校の玄関の階段にある周期表が思わず頭に浮かび、
詩人・童話作家という、本校とは縁遠い存在であった宮沢賢治が、
急に本校と非常に近しい方に思えて仕方ありませんでした。

f:id:bunseki:20161002155315j:image
↑「分析」という言葉を見て一気に親近感を覚えました

f:id:bunseki:20161002155318j:image
↑賢治に教わった生徒が語った賢治のエピソード
 周期表を独自で作成していたことが分かります

f:id:bunseki:20161002155319j:image
↑本校玄関につながる階段周期表
 天満橋のランドマークの一つになっています

聞けば、賢治は盛岡高等農林学校(現在の岩手大学農学部)で
本格的に化学を学び、稗貫(現在の花巻)農学校教諭をしており、
将来は化学博士になりたかった気持ちが手紙にしたためられている
ということで、文系理系の枠を超越した方だったんだなと
改めて感動をしました。

また、彼は幼少のころから鉱物や岩石に親しみ、
そこに含まれる元素に彼なりのセンスで自分の心情を投影し、
作品として残していきました。
まさに、私たちが普段一般の方々に申し上げている
「化学は私たちの身の回りに日常的に存在している」
ということそのものを体感しながら成長したことについても感動しました。

このブログをご覧になり、興味を持たれた方もたくさんいらっしゃると思います。
しかし、賢治の化学との知られざる関係性はまだまだたくさんあるようですので、
ちょうど15日から大阪市立科学館で開催される宮沢賢治に関するイベントをご紹介します。
なお、講演会は事前申し込みがいるようですので、お早めに...。

■展示:宮沢賢治生誕120年記念企画イベント『化学と宮沢賢治』
■期間:10月15日(土)~来年の1月15日(日)
■場所:大阪市立科学館 
■講演会
(1)10/23(日)『祖父から聞いた宮沢賢治』
   講演者:宮沢賢治の弟を祖父に持つ宮沢和樹氏
(2)11/27(日)『宮沢賢治と化学』
   講演者:本日、本校でご講演頂いた桜井先生
■ポスター:http://www.sci-museum.jp/files/pdf/kenjimiyazawa_flyer2016.pdf

f:id:bunseki:20161002155323j:image
↑このポスターの詳細は上記URLでご覧いただけます。

f:id:bunseki:20161002155321j:image
↑宮沢和樹氏の講演案内。ちなみに、10/23(日)は化学の日です!

f:id:bunseki:20161002155322j:image
↑桜井先生の講演案内

最後に、桜井先生と本校の名誉校長、理事長と共に、
記念写真のお仲間に私も入れて頂きました( *´艸`)

f:id:bunseki:20161002155320j:image

この場をお借りして、本日ご講演いただいた桜井先生に
お礼を申し上げたいと思います。
貴重なご講演、誠にありがとうございました。

さぁて、明日からまた新しい一歩を踏み出すぞ!
創立記念日を終え、心新たにする すくろーす であった...。

by すくろーす