2017.06.11
土日学科の1年生は今日、歴史ある「医薬品の合成」に挑戦しました。
本校では、平日に通学できない社会人や大学生等を対象とした、週末(土曜・日曜)開講の
「分析化学応用学科」を設置しています。この学科は、平日に設置の学科で学ぶ専門分野を
総合的に学べる特徴があります。また、週末だけの通学ですが、平日学科と同様に2年間で
卒業でき、卒業と同時に3つの国家資格(毒物劇物取扱責任者・化粧品製造業責任技術者・
化粧品総括製造販売責任者)を「無試験」で取得することができます。
この土日学科に在籍する学生は、高校を卒業の後すぐに入学される方はもちろん、社会人の
方も少なくありません。社会人の方は現職でのスキルアップを目指す方、技術職への転職を
考えている方、経営層の方には事業の拡大を考えている方もいますが、大学生も就職活動を
見据えて、技術力を高める目的などで入学しています。
「分析化学応用学科」では、環境・材料・バイオ・食品・医薬品・化粧品・有機合成などに
ついて総合的に学ぶことができるので、就きたい仕事の業界・職種等が決まっていない方が
学びながらその方向性を決めていくこともできます。このように多様な目的に対応するため、
このコースは学年定員20名の少数精鋭で開講しています。
さて、今日は午後から1年生が歴史ある「医薬品の合成」に挑戦しました。その医薬品とは、
「アセチルサリチル酸」です。少し難しそうに聞こえますが、解熱・鎮痛剤として広く使用
されている「アスピリン」の別名です。少しだけこのアスピリンの歴史をご紹介しましょう。
アスピリンの起源はある種のヤナギの成分で、歴史的にギリシア時代にまでさかのぼります。
実際に有効成分が単離されたのは1819年、純物質の結晶化に成功したのは1827年のこと。
しかし、この成分はアスピリンとは異なり、内服できないほど苦く、実際に純薬として使用
されたことはありません。昔からの言い伝えを信じて、ヤナギの樹皮を煎じて服用していた
欧州の人々も、解熱・鎮痛作用を求めて、この苦さにひたすら耐えていたと言われています。
この欠点を克服するために、多くの科学者たちが代替品を求め続け、最終的には、1897年に
ドイツにあるバイエル社の化学者フェリックス・ホフマンにより副作用の少ないアスピリンの
創製に成功、人々が熱や痛みから解放されたのは、1899年のことだったようです。そう聞くと、
海外での遥か昔の物語に聞こえますが、実は皆さんに馴染みのあるお薬の成分として使用され、
私たちは今も脈々とその恩恵を受けているのです。そのお薬とは、そう!「バファリン」です。
このような背景のある医薬品の合成ですので、一年生たちは悪戦苦闘しているかと思いきや、
実験ガイダンスの内容を一つひとつ確認しながら、そして楽しみながら、取り組んでいました。
今日の実験では、ただ単に合成するだけではなく、純度の高い合成物を得るための工夫として
再結晶の操作にもチャレンジしていました。
今日は医薬品の「合成」と、純度を高める「精製」に取り組みましたが、本当にアスピリンが
合成できたの?純度は高められたの?と、一年たちにも疑問が残っているようです。それでは
一年生たちに分析してもらいましょう!その様子は次週のブログで紹介しますのでお楽しみに!
by あずみ