2017.08.26
本日の実験で分析化学応用学科1年生が最初に行った実験操作は、ガスバーナーの火力を
調節しながら、白い容器(るつぼと言います)を焼くことでした。
実は、この実験は試薬の純度測定などの仕事にもつながる分析化学の技術を学ぶ実験なの
です。
医薬品・食品・化成品などのものづくりの現場で新しい製品を開発する場合や製品の品質
を管理する場合、環境や健康の状態を測定する場合など、私たちの生活を豊かにしたり、
安全・安心な状態に保ったりする場面で、必要不可欠な技術が分析化学という技術です。
そして、このような私たちの生活を支える分析化学という技術の修得を目指す本校には、
平日に通学できない方を対象とした土曜日・日曜日開講の「分析化学応用学科」があり、
技術職への就職や転職、現職でのキャリアアップやスキルアップ、勤務先や自ら経営する
企業の事業拡大に必要な国家資格の取得などの様々な入学目的を持った学生が在学して
います。
このように多彩な入学目的を持つ学生に対応するため、分析化学応用学科は、1学年
あたりの定員を20名とする少数精鋭で開講しています。
なお、土曜日・日曜日の通学でも、平日の学科と同様に2年間で卒業することができ、
毒物劇物取扱責任者・化粧品製造業責任技術者・化粧品総括製造販売責任者の国家資格
も卒業と同時に全員が取得することができます。
さて、技術を修得する上で、実習は欠かせません。分析化学応用学科でも様々な実験を
通して、技術を修得していきます。
また、上で述べたように、分析化学応用学科には様々なニーズや経歴を持った方が入学
してきます。目指す分野も様々ですし、化学初心者の方も多くいます。
そこで、分析化学応用学科では実験器具の取扱い方や基本的な実験操作を修得する実験、
簡単な実験器具を用いて手作業で分析する方法を修得する実験、分析機器の扱い方を修得
する実験、そして食品や河川水など様々な実際の試料を分析する応用的な実験と、段階的
に技術を修得していくことができるようなカリキュラムとなっています。
現在、基本的な操作を学ぶ実験(基礎化学実験)を終えた1年生は、物質の化学的性質を
用いて手作業で「何が」あるかを調べる実験(定性分析実験)や「どれだけ」あるかを
調べる実験(定量分析実験)を行っています。
本日は定量分析の1つである重量分析という方法に取り組みました。
重量分析法とは、濃度を知りたい目的成分を安定な化合物の状態にしたうえで、
化合物の重さを量り、その結果から計算して、試料中の目的成分の濃度を測定する
方法です。
重量分析法は古典的な方法ではありますが、唯一、直接的に重量を測定する方法で、
標準試料や標準溶液の調製にも欠かせない方法であるため、修得を目指します。
今回の実験は鉄の重量分析を行うため、鉄の溶け込んだ溶液に試薬を加えて、鉄の
沈澱を作ります。
茶色い鉄の沈澱が生成しました。
ろ過により沈澱を回収しています。
1枚目の写真は、加熱と冷却を繰り返して、るつぼの周りに付着した汚れなどを除去し、
るつぼの重さが変動しない状態(恒量と言います)にするための操作だったのです。
恒量になったるつぼに、先ほど回収した鉄の沈澱を入れて、さらに加熱して安定な
化合物へと変化させ、最終的に重量を量ります。
しかし、1回の実験で終わる操作ではありませんので、本日は鉄の沈澱を回収した
ところで終了です。
1年生は現在、基本的な実験手法を学んでいるところですが、この技術が応用的な実験、
そして仕事へとつながっていきますので、1つ1つ着実に修得して、分析化学者としての
自信にもつなげていってほしいと思います。
by みなと