2022.06.21
今日は医療医薬分析学科2年生の医薬品分析化学実験を担当しました。
私が今日担当した実験は『酢酸エチルの合成』という実験です。
エステルというグループの物質で、化学実験では有機溶剤としてよく使われる物質です。
1滴ビーカーなどにいれてにおいを嗅ぐとバナナのような果物臭がします。
学生達に実験開始前に市販されている試薬のにおいを嗅いでもらったところ、
学生達は、果物よりも小さい頃に遊んだ『ビニール風船』のにおいをイメージしたようで、
口々に『あのふくらますやつのにおいだよね?』と話していました。
酢酸エチル自体は医薬品ではありませんが、合成するときに用いられる『エステル化』という反応や、
物質の精製過程は医薬品分野でも必要な知識なので、この実験に取り組んでいます。
また合成した後にガスクロマトグラフという分析機器で生成物が目的通りにできているか、
不純物を含んでいないかを確認するのですが、医薬品を合成した後にも残留溶媒の検査をガスクロマトグラフで行いますので、そのトレーニングにもなります。
実験では、お酢の酸っぱい成分『酢酸』とお酒に含まれるアルコールである『エタノール』を混ぜて『硫酸』の力を借りて反応を進めます。
簡易的な反応装置を自分たちで組み立てて15分間反応させて、できたものを精製しました。
この生成物の精製に『分液ロート』という器具を初めて使いました。
この器具で水に溶けない酢酸エチルと水に溶けるエタノールなどを分離していくのです。
私が学生の時には、ガラスのコックが外れやすくて、中身をこぼしてしまった思い出があります。
今はテフロンコックがついていて、失敗しにくくなっているのでいいですね。
それでも学生達は初めて扱うガラス器具を慎重に扱って、酢酸エチルだけを取り出していました。
上の写真のS君の持っている分液ロートをみると液体が途中で二層になっていますね。
上層が酢酸エチルで、下層が水溶液です。
このあとは1年生の時にも基本的な使い方を学んでいるガスクロマトグラフでの測定です。
『先生、結構使い方忘れてるわー』と言いながらも、学生同士で『マイクロシリンジの持ち方はこうだよ』とか、
教えあいながら機器を扱っていました。私が細々言わなくてもみんな大丈夫みたいですね。
終わってから学生達に感想を聞いてみると、
『HPLCは2年生になって何度か扱ったけど、ガスクロは久々すぎて忘れていることもありました。
でも触っているうちにすぐ思い出しますねぇ』と語ってくれました。
一度自転車に乗れるようになった人は、しばらく乗らなくても乗り方を身体が覚えているものです。
分析機器の扱いも似たところがあり、1年生の時にじっくり経験しているので、しばらく扱ってなくても使い始めると自然と扱い方を思い出せるんですね。
会社に入ってからも同様です。本校で様々な実験を学んだことが自然とできるように、学生のうちに
積極的に実験にチャレンジしてくださいね。
by ドラいちろう