2023.02.20
本校には土曜日、日曜日だけ開講している『化学分析学科』という学科があります。
この学科は高校卒業すぐに入学することも出来ますが、平日開講の学科に通学できない社会人やダブルスクールの大学生、フリーターや主婦などにも門戸を広げ、リカレント教育や資格取得のための学科を開講しています。
入学してくる学生達の目標は様々で、本校で分析化学の知識と技術を学んで、就職や転職を目指したり、化学や化粧品に関する資格取得などを目標としています。
卒業と同時に無試験で国家試験を含む4つの資格(毒劇物取扱者責任者・化粧品総括製造販売責任者・化粧品製造業責任技術者・環境管理士(2級))を取得できるため、近年は資格取得を目的とした方の入学が増えているよう思います。
毎週土日のみの通学ですが、平日通学学科と同様に2年間で卒業できることも特徴です。
平日開講の学科は春期休暇に入っていますが、化学分析学科は平日かいこう学科と同様に2年間で卒業するカリキュラムを受講するために、2月いっぱい授業があります。
今日の1年生は応用分析化学実験の日でした。応用分析化学実験は、これまで身に付けてきた様々な実験の基礎的な技術を応用して、実際の食品分析や医薬品分析、微生物検査や水質分析などに取り組みます。
今日の内容は、紅茶の中のカフェインを取り出す実験とホウレン草の中の色素を『カラム』という器具を使って分離する実験です。このカラムという器具で物質を分離する原理は、ガスクロマトグラフィーや高速液体クロマトグラフィーにも応用されており、これらの分析機器の中でどんなことが起こっているのかを実感するのに最適なのです。
またカフェイン抽出の実験ではエバポレーターという装置を使うところと、分液ロートという器具を使いところがポイントです。
エバポレーターはポンプを使って圧力を下げ、溶媒を蒸発しやすくする装置です。蒸留した液体の方が必要だったり、溶媒を除去したあとに残った物質が必要だったり、使い方はいくつかあるのですが、今日の実験ではカフェインを回収するために余計な溶媒を除去するのに使います。
分液ロートの実験では、煮出してお湯の中に溶け出したカフェインを有機溶媒に抽出しています。水から有機溶媒にカフェインを移動させるのです。紅茶にはカフェイン以外にポリフェノールや様々な物質が溶け出しているので、分液ロートを使って、カフェインだけを有機溶媒に取り出そうとしているのです。
この取り出したカフェイン+有機溶媒をエバポレーターにかけて、有機溶媒を取り除くとカフェインのできあがりです。
ホウレン草の実験では色素が分離していく様子を観察します。最初は緑一色だった液体が黄色や緑に分かれていきます。
緑色は葉緑素(クロロフィル)、黄色はβ-カロテンなどのカロテノイド色素の色ですね。無色の物質を分離することも出来ますが、今日は分かりやすく色の付いた物質で実験をしています。見た目でよく解るため、学生達は『ガスクロや液クロの中で何が起こっているかよく解った』など口々に話をしていました。
また自分たちが次年度行う卒業研究に使えるか、自営の仕事の中で使えるか、など今日の授業の中だけに留まらず、話題は広がっているようでした。
分析化学は1つのものを調べるだけでなく、いろんなものが混ざったものから目的のものを分離して調べます。金属イオンについては分離する方法を定性分析実験で学びましたが、有機化合物については本格的に学ぶのは今回の実験が初めてです。非常に重要な技術ですので、しっかりマスターして2年生での実験や卒業研究に活かしてくださいね。
by ドラいちろう