2024.12.16
本校には土曜日、日曜日だけで開講している『化学分析学科』という学科があります。
専門学校と言えば、高校卒業後すぐに進学する学校と考えて居られる方も多いと思いますが、この化学分析学科には幅広い年齢層の学生が通学しています。この学科は、平日開講の学科に通学できない社会人やダブルスクールの大学生、フリーターや主婦などにも門戸を広げ、リカレント教育や資格取得の勉強をしています。『高校を卒業していること』が入学要件ですので、高校を卒業してすぐに入学してきた学生もおり、今年度は各学年に1名ずついます。入学してくる学生達の目標は様々で、本校で分析化学の知識と技術を学んで就職や転職を目指している方や、化学や化粧品に関する資格取得を目的としている学生が多い印象です。
平日開講学科と同様に2年間で卒業でき、卒業と同時に無試験で国家試験を含む4つの資格(毒劇物取扱者責任者・化粧品総括製造販売責任者・化粧品製造業責任技術者・環境管理士(2級))を取得できます。そのため近年は資格取得を目的とした方の入学が増えているよう思います。
毎週土曜日・日曜日の2日のみの通学で、平日開講学科と同様に2年間で卒業できるようにするため、1日の授業時間数は多くなりますが、それでも他校にはない特徴の学科と言うことで、例年全国各地から学生が入学しています。京阪神地区の学生が多いですが、遠方から週末だけ登校し土曜日の夜は大阪で一泊して日曜日の授業が終われば地元に帰るという生活をしている学生もいます。
今日の1年生は、応用分析化学実験Ⅰの日でした。応用分析化学実験では、これまでに学んだ実験技術を応用して実際の食品や化粧品、河川の水の分析を行います。今日は、学校の目の前を流れる大川の水質調査を行いました。
調べた項目は、化学的酸素要求量(COD)という項目です。本来、CODは河川ではなく湖沼や海域の水の調査に用いる方法ですが、学校などでは河川水の分析にもよく行われます。そういえば、私も学生時代に、淀川の水質調査を実施しました。
CODの実験は少し前に行った酸化還元滴定の応用です。同じく溶液を酸性にして過マンガン酸カリウムという溶液で滴定を行います。過マンガン酸カリウムで、河川水中の有機物を分解するのですが、分解するのに加熱とある程度の反応時間が必要になりますので、各溶液を混ぜたあと、30分間沸騰水浴中で加熱します。
また本校のある大阪市北区天満あたりは大阪湾にも近く、学校前の河川は海水の満ち引きの影響で、かなり塩分(塩化ナトリウム)を含んでいます。この塩分がこの実験に影響を及ぼすので、最初に塩分を取り除きます。ここで銀イオンを含む溶液を入れて塩化銀を作って沈殿させるのですが、学生達からは『定性分析の1族でやった反応ですね』と声が上がりました。そうです。定性分析実験では銀イオンを塩化物イオンで沈殿させましたが、ここでは塩化物イオンを銀イオンで沈殿させています。原理としては同じものを使用しています。
金属の分析に用いる反応という1面だけでなく、別の角度から反応を理解しているのはすばらしいですね。
酸化還元滴定と定性分析実験の知識を組合せ、その応用実験を理解できるようになる。そしてデータ処理では統計工学で学んだ『外れ値の検定』を行って著しく外れた値は除去して計算する。これまでバラバラの知識として身に付けてきた知識と技術がひとつに統合されています。まさに応用分析化学実験の醍醐味ですね。
来年度行う卒業研究も今まで行ってきた実験の組合せで様々なテーマに取り組むことができます。ぜひ残り数回の応用分析化学実験の中からやりたいテーマと実験方法を検討していってくださいね。
by ドラいちろう