せんせのブログ

京都府立綾部高校由良川キャンパス ~出張実験会~

2025.01.10

本日は、京都府立綾部高校由良川キャンパスにて「食品分析実験と講演」を実施しました。

綾部高校由良川キャンパスでの実験会は、平成23年度から継続してお声掛けいただいております。途中、新型コロナウイルスによるパンデミックにより実施できずにいましたが、昨年度に引き続き開催することができました。

今回の実験会のテーマは、「食品分析の実際と応用」です。
出張実験会では、化学を楽しく理解いただくための楽しい実験が中心となります。
綾部高校由良川キャンパスの生徒さんは、日常的に環境や食品などをテーマに、様々な実習や実験を行っています。
実験を楽しんでいただくことはもちろんのこと、環境や食品分野には欠かせない分析化学という基盤分野をお伝えすることを意識して、実施しました。
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今回は、分光光度計という分析機器を用いて、身近な飲料に含まれている鉄分を分析する実験を行いました。

鉄分の分析に入る前に、実験の原理をご理解いただくための簡単な実験を行いました。
でんぷんとヨウ素が出合うと、ヨウ素デンプン反応が起こり、色がつきます。
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デンプンの量を段階的に変更することで、ヨウ素デンプン反応による青紫色のグラデーションが現れます。実験の結果をご覧ください↓
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青紫色が濃いほど、でんぷん量が多いことがわかります。
でんぷんの量と色の濃さとの間には、正比例の関係があります。
色が濃ければでんぷんがたくさん入っており、一方薄ければでんぷんは少ない。

ところで、色が「濃い」、「薄い」というのは誰が決めるのでしょうか?
人によって、これまでの経験が違うため、色が濃いか薄いかの判断は異なります。
そうすると、でんぷんの量を判定するときに、個人差が生まれてしまいます。
それでは困りますね。

ここで活躍するのが、分析機器です。
今回使用する分光光度計は、色が濃いか薄いかを「数値」で表すことができます。
色が濃いほど、数値が大きくなります。
つまり、でんぷんの量が多いほど、数値が大きくなります。
この機器のおかげで、人の主観に依らない客観的な判断が可能となるわけです。

でんぷんの量と色の濃さとの関係をグラフで表したものを、分析化学の世界では「検量線」といいます。
この検量線という考え方を用いて、今回は市販の飲料に含まれている鉄分含有量を求めることが目的です。

それでは、実際に鉄分含有量を求めてみましょう。実験の様子です↓
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今回の実験で得られた鉄分含有量は、1.76mg/100mLとなりました。
市販の飲料には、1.5mg/100mLと記載されています。
近い数値を求めることができました。お見事です。
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分析化学者は、分析機器等により信頼のあるデータを取得することが一つの仕事です。
身の回りにある食品の成分表示に目を向けてみると、脂質が~g、鉄分が~mg/100mLなどと記載されていますね。
医薬品に適切に有効成分が入っているか、水道水がきれいか、大気中に基準以上の有害物質が含まれていないか、などを調べます。
分析化学者は、実に様々な分野を支えてくれています。
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食品や環境分野に限らず、分析化学は身の回りのすべてのものに深く関わっている身近な存在です。
分光光度計を用いることで、身近な食品に含まれる物質の量を測定できる。
これはとても面白いことだと思います。
この実験会を通して、分析化学の楽しさを見つけてもらえると大変嬉しく思います。
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綾部高校の生徒のみなさん、ご協力いただいた先生方、本日はありがとうございました。
出張実験会にご興味を持たれた方は、是非一度本校までお問い合わせください。

byナマステ